東京高等裁判所 昭和30年(う)2565号 判決
被告人 平沢鉦吉
〔抄 録〕
弁護人の論旨第一点について。
原判決が、原判示(一)の被告人が大蔵大臣の免許を受けないで相互銀行業を営んだ所為に対し、刑法第六十条、相互銀行法第二十三条、第四条、第二条第一項第一号を適用していること、及び右相互銀行法第二十三条が、大蔵大臣の免許を受けないで相互銀行業を営んだ者を処罰する規定であることは、いずれも所論のとおりであつて、所論は、本件において、大蔵大臣の免許を受けないで相互銀行業を営んだ者は、法人たる八洲勧業株式会社であつて、被告人等個人ではなく、又、被告人は、相互銀行法第二十七条所定の右法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でもないから、同法違反罪の処罰の対象とはなりえないものであるのに、原判決は前示のように、被告人に対して同法第二十三条等を適用したのであるから、原判決には、この点につき法律の解釈適用を誤つた違法がある旨主張するにより、案ずるに、相互銀行法第二十三条は、自己のためにすると他人のためにするとを問わず、大蔵大臣の免許を受けないで相互銀行業を営んだ自然人たる事実行為者を処罰することを定めた規定であつて、営業主たる法人を処罰する趣旨までも包含するものではないと解すべく、又、同法第二十七条は、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第二十三条又は第二十四条の違反行為をしたときに、その事実行為者を罰する外、営業主たるその法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科することを定めたいわゆる両罰規定であると解すべきところ、これを本件についてみるに、原判決においては、被告人らが、所論八洲勧業株式会社の業務として、原判示第一の相互銀行業を営んだ旨を認定判示していることは、所論のとおりであるけれども、原判決挙示の関係証拠によれば、大蔵大臣の免許を受けないで原判示第一の相互銀行業を営んだ事実行為者は、原判決認定のように被告人及び原審相被告人船津健男らであつたことが認めえられるのであつて、これらの人々の原判示第一の所為が、相互銀行法第二十三条に該当することは明らかであるから、原判決が被告人に対し、同法条を適用処断したことは正当であるというべく、所論は、被告人と同法第二十七条との関係を云々するけれども、同条は、被告人らの違反行為に基ずき前示法人を処罰しようとする場合において必要となるけれども、本件のように、単に事実行為者たる被告人らのみの違反行為を処罰するについては、何ら関係がないものといわなければならない。してみれば、原判決には、この点につき所論のような法律の解釈適用を誤つた違法があるものということはできないから、論旨は理由がない。
(中西 山田 石井謹)